Road to Early Retirement ~早期退職への道~

早期退職を考え始めた50代半ばのおっさんの日記 / コロナウィルスの影響で失業後、再就職。2年後に役職解任

『Amazonの倉庫で絶望し、Uberの車で発狂した』? 誰も発狂などしてないが。。。

図書館で予約していた本がようやく借りれたので週末に一気読みしました。

映画『家族を想う時 Sorry We Missed You』とセットで読むのがお勧め

この本は大きく4章に分かれていて、著者のジェームス・ブラッドワースがアマゾンの倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバーのドライバーに実際に就職してその体験を書いたものです。

それぞれの職場での自身の経験とその職場で働いている同僚(ポーランドからの移民がしばしば登場)の証言が書かれているのですが、アマゾンの倉庫や大手保険会社のコールセンターが造られた地方都市の背景も書かれており、かつて栄えた炭鉱の話、そこで働いていた炭鉱夫のおじいさんの述壊もかなりのページを割いています。

この本で気付くのはイギリスでは石炭が1985年ころまで主要な産業として存在していたという事です。1966年生まれの私は北炭夕張炭鉱や三井三池炭鉱の事故のニュースについて記憶がありますが、物心付いた頃には石炭産業は日本ではかなり衰退してという印象があります。

この本はケン・ローンチ監督の『家族を想う時 Sorry We Missed You』とセットで読むとよりイギリスの社会が現在置かれている状況を理解できます。

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映画の主人公は個人事業主としての宅配ドライバー、これはこの本ではスマホを駆使するウーバーのドライバー(本の第4章)に置き換えられますし、、映画の主人公の妻はお年寄りや身体が不自由な方々を訪問してケアする介護士そのものです(本の第2章)。

高齢化社会、介護の問題、移民問題、貧富格差の拡大。。。様々な社会問題はイギリスの方が日本より5〜10年位進んでしまっているのでしょう。

実は自分も3つの職場は経験済

自分の過去を振り返ると4つの仕事の内、3つは経験済と言えます。

  1. Amazonの倉庫 = 流通センターでの靴・サンダルの品出しのアルバイト
    大学1年生の夏休みに流通センターの倉庫で靴・サンダルの品出しをするバイトを1ヶ月強しました。そのバイトを選んだ理由はバイト代が1日7,000円と割が良かったからです。伝票に従い、倉庫に積み上がったダンボールをおろして、佐川急便のトラックが待っている場所まで運ぶという単純な作業でした。もともと力が無い自分は1日のバイトで腕の筋肉が痙ってしまいましたが、なんとか8月末まで週5日働きました。
    バイト仲間はヤンキー系の人が多かったですが、ナヨナヨした大学生の私でも普通に接してくれました。但し、うす暗い倉庫の中で一日中ダンボールを上げ下ろしする仕事は長くは続けたいとは思いませんでしたね。夏休みの期間限定、お金がいいと言うことで割り切ってできた仕事です。

  2. 訪問介護 = 未経験
    介護の仕事は未経験です。この本を読んだ時も、『家族を想うとき』を見たときも思ったのですが、多分、自分には他人の下の世話はできないのではないかと感じています。そういう意味では医療・介護関係の方々にはただただ頭が下がる思いです。

  3. コールセンター = ITソフトウェア・ベンダーのテクサポ
    私は本業としてはITソフトウェア・ベンダーのテクニカル・サポートを経験していますし、それに関連した職種の管理職も10年以上経験しています。若い頃にテクニカル・サポート・エンジニアをしていた時はテクサポの社内からの評価の低さに悩んでいました。休日や時には夜中に電話で叩き起こされ、問題解決に対応しお客様の役に立っているつもりでしたが、何故か社内の一部の人からは「技術のことしか判らないから、そういう仕事しかできない可愛そうな人」みたいな見られ方をしていた様な気がします。それもあって、少し軸をずらしながら職種を変え、今に至っています。

  4. Uberのドライバー = 副業としてのUber Eats配達員
    これは当ブログで沢山記事を書いていますが、本業に行き詰まり感が出始めたので副業として始めて、今は失業状態なので、失業手当に加えてマイナス家計の補填のためにやっているという次第です。

 この本が言うように搾取する側と搾取される側の格差がどんどん広がるという懸念は昔からあるようです。この本はギグ・ワークで「自由な働き方ができる」、「嫌な上司に媚つらう必要がない」といった良い面ばかりにとらわれていないで搾取されていることに気づけ!という警告かもしれませんが、自由な働き方や時間・場所に制約されない働き方が増えることは基本的には良いことだと私は考えています。

誰もUberで発狂などしていません

最後に余談ですが、この本の原題は『HIRED - Six Months Undercover In Low-Wage Britain』です。意訳すると『雇われてみた - イギリスの低賃金会社への6ヶ月潜入レポート』って感じでしょうか。

読めば判りますが、筆者、あるいは本でインタビューを受けている人は決してUberで発狂などしていません。少なくともそんな表現はなかったです。この『Amazonの倉庫で絶望し、Uberの車で発狂した』という刺激的なタイトルはどうかと思いますが、少なくとも読んで見ようかという気にはさせたので良しとしましょうか。

(了)